途絶えかけた歴史を守り継ぐ。
アメリカが最も華やかだった1950年代、その時代を象徴するデザインムーブメント「ミッドセンチュリーモダン」が生まれました。それは新素材と未来的なデザインが融合したこれまでにないスタイルで、未来への展望が凝縮された作品の数々に、人々は魅了されていったのです。
それから半世紀以上が過ぎ去った今でも、ミッドセンチュリーモダンは世界中の人々に愛されています。その代表格とも言えるのが「シェルチェア」。当時の新素材「ファイバーグラス」を使用、装飾や無駄を極限まで削ぎ落とした完璧なシェイプを特徴とし、輝かしい名を歴史に刻むことになりました。
その後、世界は大量生産・大量消費の時代に突入します。人手とコストを要するファイバーグラスシェルチェアは安価なプラスチックを用いる時流に押されて、次第に勢いを失っていきました。
シェルチェアを最初に生み出し、以後も幾多のシェルチェアを造り出してきた「ゼニス工場」も、1980年代に稼働を完全停止。ファイバーグラスシェルチェアの歴史が途絶えるかと思われたその時、ゼニスから社名を変更した「センチュリー プラスチック」のシェルチェアプレス機が「MODERNICA(モダニカ)」社へ渡ることに。
消えかけていた歴史の燈火が、新しい時代に受け継がれた瞬間でした。